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寒天ダイエットは本当に効くの?
2005.07.01

 先日久しぶりに妻の夕食の買い物につきあいました(なぜかたまに行くと患者さんとよく遭遇します)。ぶらぶらと売り場を歩いて寒天を売っている場所に来ると寒天のところがカラになっており”寒天はテレビで取り上げられてから品薄になっていて次はいつ入荷するか分からない”的なことが書いてある張り紙がしてありました。情報ソースは○○大辞典のようで、そこでは「寒天ダイエット」ということで「寒天は驚くべきダイエット効果を持った食品」なんてやっていたようです。その前振りとして「イギリスの有名な医学雑誌に寒天が減量ばかりでなく、コレステロール低下などに有効という結果が発表された」と紹介していました。しかし今までにも嘘とは言わないまでも非常に誇大にマスコミがあおり、それによりいつも困らされている経験をしてきている私は本当に科学的根拠があるのか調べてみることにしました。
原著はDiabetes, Obesity and Metabolismというイギリスの雑誌に収載された
Maeda H, Yamamoto R, Hirao K, Tochikubo O. Effects of agar (kanten) diet on obese patients with impaired glucose tolerance and type 2 diabetes.
Diabetes Obes Metab. 2005; 7: 40-6.
という論文で abstractは一番最後にお示し致しますが要約すると、耐糖能異常あるいは糖尿病の76人を無作為に2つのグループに分け、片方には今までどおりの食事を、もう片方には食事前に寒天を食べてもらい、12週間後にBMIや血糖がどう変化したか比較したところ、結果は寒天を食べた群の方が体重、BMI、コレステロールがより低下していたというものです。番組ではこれで「寒天には驚くべきダイエット効果がある」と証明されたと話が始まってしまうわけですがよく読んで頂くと分かるように「摂取カロリーの低下により代謝パラメータが改善した」としっかり書いてあり、「寒天の特有の効果により」とは書かれていません。番組としては「寒天特有の著明なダイエット効果」を売りにしていましたが、この論文をしっかり考えてみると、体重減少などの効果が見られたのは、寒天により
糖分の吸収が緩やかになったことより、食事前に低カロリーの
余分なものを食べることにより、元々の食事摂取が減り、その結果摂取カロリーが低下したことの方がより強く働いたのではないかとも考えられますし、実際の論文の結論もそういうことのようです。もしこれを「寒天特有の効果」であると証明するとしたら、まったく手法の違う方法で実験をやり直さなければなりません。何でこの論文で”寒天が”すばらしいということになってしまうのか私には理解できません。番組中ではしっかりした根拠があるかのように持って行っていますが証明できないことは明らかです。大事なことは摂取カロリー全体を下げるということなのです。つまり寒天じゃなくてもこんにゃくでも何でもいいということになります。 マスコミ関係の方も公共の電波を使って情報を発信しているわけですから間違ったとらわれ方をしないように気をつけて頂きたいものです。

abstract
AIM: The aim of this study was to evaluate the efficacy of agar diet in combination with a conventional diet (traditional Japanese food) for obese patients with impaired glucose tolerance and type 2 diabetes. METHODS: After a 4-week run-in period on their habitual diets, 76 patients were randomly assigned to have conventional diet or conventional diet with agar. Both groups were on these diets for 12 weeks. Body weight, body mass index (BMI), glycaemic control, blood pressure, insulin resistance, total body fat, fat distribution and lipids were assessed before and after the experimental period. RESULTS: In both groups, after 12 weeks, mean body weight, BMI, fasting glucose levels, homeostasis model assessment-insulin resistance, and systolic and diastolic blood pressures had decreased significantly from their baseline values. HbA(1)c, visceral fat area, subcutaneous fat area, total body fat, insulin area under the curve after oral glucose tolerance test and total cholesterol decreased significantly in the agar-diet group. After 12 weeks, mean changes of body weight (-2.8 +/- 2.7 kg vs. -1.3 +/- 2.3 kg, p = 0.008), BMI values (-1.1 +/- 1.1 kg/m(2) vs. -0.5 +/- 0.9 kg/m(2), p = 0.009) and total cholesterol (-7.6 +/- 27.5 mg/dl vs. + 2.4 +/- 23.4 mg/dl, p = 0.036) were significantly greater in the agar-diet group than in the conventional diet group. CONCLUSIONS: The agar diet resulted in marked weight loss due to the maintenance of reduced calorie intake and to an improvement in metabolic parameters.

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